スポーツ疾患
2020年01月27日、掲載
スポーツ疾患: 痛みだけがテーマではない
今日では筋肉のコンディショニング・メンタントレーニングなど様々な分野にトレーナーが活躍するようになりました。そして、試合中に即座に対応できる鍼灸術は必要な技能の一つと考えられています。
過去の事例をあげてトレーナーの仕事について考えてみます。
プロ野球の選手がスライディングキャッチで骨折するシーンが放映されました。(元ヤンキーズの松井選手が指を骨折した事故です)
彼は、上を見上げながら落下点へと走り、ボールの落下に合わせて姿勢を低くしながら視線を下に移動させています。この動作で大きな負担を担う感覚は平衡感覚です。その感覚の不具合が瞬間的な脳のフリーズ (意識が薄れた) 状態を招いたのでしょう。手の力が抜け、ボールなどの重力に負け、手は垂れ下がってしまいます。体の勢に逆らって指は可動域を越えて曲がってしまったのです。そして骨折に至りました。
この例は、動作の方向こそ違いますが、いわゆる「立ちくらみ」と同じです。平衡感覚の失調状態をケアしていたならば、未然に防げた事故だと考えられます。
そして、選手がベストを尽くせるコンディショニングに筋以外の、すなわち内臓器官や感覚器などへのアプローチの重要性を示した例と言えます。
コンディショニングに忘れることはできません(鍼灸・反応点治療)。
- 平衡感覚の手当が無駄な動きを回避する。
- 適正な運動を誘導する。
- 心肺機能が、ゴール前の粘りを左右する。
- 内臓の小さな痛みが、拮抗筋を緊張させて、筋肉のはり感や痛みを生みます。
運動のメカニズムから見たコンディション
運動は選手の意思を筋肉に伝える錐体路系と適切な運動に調整する錐体外路系の統合でされます。調整系とは、平衡感覚・視覚・深部感覚(脊髄反射)などの錐体外路系からの反射(抑制系)を言います。
プロ野球の選手がスランプに陥った時にフォームを確認します。しかし姿勢反射(平衡感覚)が運動を誘導しますから、フォームが改善されたかは不明です。前庭の機能は本人に理解できませんが、内耳の障害を管理することがコンディショニングに求められます。
著書
平衡感覚を指標にしたスポーツ選手のコンディショニング、コーチングクリニック2;76-78.2002.
内臓機関の経穴反応に鍼灸を用いたスポーツ選手のケア、医道の日本誌、709;55-60.2005.