不妊症に関するニュース
2020年01月07日、掲載
ブリュッセル自由大学(ベルギー)名誉教授のAndre Van Steirteghem氏によれば、顕微受精で出生した成人男子の精子は、数の減少・運動精子の減少がある。また、心臓や呼吸器障害リスクも高いと報告されています。
えっ、顕微受精で出生したが、男子の精子に疑問点が・・
昨今は、特定の疾患がなければ顕微受精をする例が増加しているそうです。1日も早く赤ちゃんが欲しいと願うご夫婦にとって、体外受精は無視できないのもよく分かります。体外受精によって出生した方々に心臓や呼吸器疾患リスクがあるとは驚きです。
シリーズ免疫とアレルギー2、基礎知識1 胎児の免疫(www.seibutsushi.net/blog/)
免疫とアレルギーには妊娠の初期の免疫について書かれています。卵胞内には排卵後5W程度でマクロファージが、7 W で出現、好中球14W、NK16W そして母体とのIgGの移行は16W と書かれています。このことは少なくとも4週間は卵胞には免疫力が無いか、脆弱の期間があります。
つまり着床して胎盤の成長が始まりますと、免疫力が飛躍的にた高まります。反対に、妊娠するか否かは子宮内の免疫力に依存しています。月経によって粘膜が剥離、綺麗なものに置き換えています。あたかもクリーンルームのようにです。ただ、月経によって細菌などが完全に排除されない例も考えられます。
受精卵の移植成功率が低い理由は・・?
鶏卵が抗菌物質を持っているのに対して、人の受精卵は受精後5週間程度の間は免疫力が微弱です。
例えば、鶏の卵白(リゾチーム)、蜂の巣(プロポリス)に抗菌物質が含まれているように、全ての動物の卵や幼虫は生命を保護する仕組みを備えています。しかし哺乳類は母体の中ですから環境はすこぶる良いと言えます。そのためか、人や哺乳動物の卵は抗菌物質などを持っていません。反対に胎盤が形成されるまでの間は免疫力が脆弱なことが考えられます。
子宮の移植で出産
米国クリーブランドのクリニックでは死亡ドナーから提供された子宮を移植し、この程、無事に出産したと報告された。世界では2例目の成功例だそうだ。不妊治療に選択肢が増えたことになる。
ただ、同クリニックのチームは、今までに5例の移植をしたが2例では移植に失敗したという。まだまだ若干の問題点が残されていると推察するが、日進月歩の進展と驚いた。
精子の運動率を精液の成分が左右する
島田 昌之氏(広島大学 大学院生物圏科学研究科 教授)は、畜産分野での精液研究について紹介した。人工授精の成功率を上げるために、ウシやブタなどでは精液成分と授精の関係について報告している。畜産分野の研究は実験が簡単であり、ヒトよりも研究が進んでいるという。
「ブタ精液の研究では、精子の運動率は、精子自身の能力だけでなく、精液の液成分の性質によって大きく左右されることがわかっている」とし、すでに技術応用されています。現在市場に出ている国産ブタの1/3程度が、これらの研究結果を活用した人工授精用精液を使って生産されているという。
子宮内膜スクラッチ法=出産率に影響なし
Lensen S, et al. N Engl J Med. 2019;380:325-334.
着床障害に有効性評価されていたスクラッチ法(=子宮内膜に小さな傷をつけて移植すると、サイトカインの分泌などによって免疫力が高まり、着床率が高まる)の臨床試験が行われた。Cont、実験軍ともに平均35歳であった。
Controle 31,2 %
スクラッチ群 31,4 % 歳はなかった。
妊娠には複雑な要因がありそうです。
昨今は無痛分娩が話題です。
陣痛の苦しみは、正確に理解することはできませんが、出産に立ち会えば、その苦しみが想像できます。そのため麻酔をしながら出産する方法が普及しています。
- 麻酔薬は細い神経から・・太い神経へと効いていきます。
- 麻酔薬は脊髄に浸みて行き、注入部から上方へと効いて行きます。
痛みを伝える神経は細いグループですが、自律神経線維、痛み以外の感覚神経・運動神経の順です。理想は痛みのみをブロックし、自律神経や運動神経に作用しない量が求められます。また、上部に麻酔薬が浸透して行きますと危険性が増加しますから、痛みを感じる部位のチェックをしながら、麻酔の効き具合を観察します。
麻酔薬が吸収されるのに個体差や注入部の特色から、麻酔の効果が出にくい場合があります。そんな場合は注入量が増加しますが、後から効いてくるなどの例もあります。反対に麻酔から覚めるにくくなつたりもします。事故はそんな場合に生じやすいと考えています。
無痛でなくても良いのではないでしょうか。極軽麻酔状態で、陣痛の痛みを和らげる、あるいは少しでも痛みを減らすと考えたとき、鍼麻酔による鎮痛もあり得ると考えます。
人工授精での成功率は30 % もあった。
排卵誘発剤( clomiphene)とレトロゾール(卵胞ホルモン抑制剤) の経口投与をしながら排卵の時期を調整し、人工授精を実施すると、31 %の方で妊娠を確認したと言う( Lancet. 2017 Nov 23. pii: S0140-6736(17)32406-6. doi: 10.1016/S0140-6736(17)32406-6.)
この論文はホルモン療法と人工授精の組み合わせで高確率で妊娠に至っていることは、日本の生殖医療においても考え直すことが必要かも知れないと思う。30% の確率は、日本の体外受精の成功率より高い確率だからである。また、家畜の繁殖においては、多くが体外受精であり、その確率はもっと高い。さらなる人の生殖医療の進展に期待する。
無痛でなくても良いのではないでしょうか。極軽麻酔状態で、陣痛の痛みを和らげる、鍼麻酔による鎮痛もあり得ると考えます。